分かる!ノーマライゼーション

ノーマライゼーションとバリアフリーの違い

1951年に北欧デンマークで生まれた社会福祉をめぐる社会理念の一つ、ノーマライゼーション。
一般的にあまり知られていない概念ですが、ノーマライゼーションは高齢者も障がい者も健常者と同様の生活ができるように支援するという考え方です。
一方、今では一般的となった「バリアフリー」という言葉があります。
バリアフリーとノーマライゼーションはよく似た考え方ですが、正確にいえば少し違っています。どこが違うのでしょうか。

ノーマライゼーションが生まれた背景

ノーマライゼーションという概念が生まれる前、デンマークでは知的障がい児が冷遇されていました。社会とは隔離された施設に収容され、1000人を超える人数で集団生活をしていたのです。
知的障がい児の親は「親の会」を立ち上げ、子どもたちの生活環境の改善や、教育を受けさせることなどを政府に要望します。
そして、この考えを広めたのが、デンマーク社会省で知的障害福祉課の仕事についていたニルス・エリク・バンク-ミケルセン(N.E.Bank-Mikkelsem)です。彼は「親の会」の意見に賛同し、彼らのスローガンを法律として実現するように力を貸しました。こうしてできた法律が、初めてノーマライゼーションといいう言葉を法律に用いた「1959年法」です。
「障害があるからといって、その人が異常(アブノーマル)なのではない。人は障害のゆえに差別されることがあってはならない。身体的もしくは知的に障害があったとしても、一人の人間であり、障害のない人と同等であり、一般市民と同じ条件のもとで生活する権利がある」バンク-ミケルセンはそのように訴え、障害のある人をノーマルにすることではなく、彼らの生活条件をノーマルにすることも訴えました。

※「ノーマライゼーションが生まれた国・デンマーク」野村武夫著(参考)

そもそも「バリアフリー」ってなに?

ノーマライゼーションとよく比較される言葉に「バリアフリー」があります。バリアフリーとは、もとは建築用語として使われていた言葉で、障がい者や高齢者が都市空間で安全に生活しやすくするため、障壁となるものを取り除いていくという意味があります。
1972年に国連の臨時機関連絡会議で、障がい者の社会参加を阻害する物理的・社会的な障壁(バリア)を除外(フリー)するための行動が必要という提案を受け、1974年の国際障害者生活環境専門家会議において「バリアフリーデザイン」という報告書が発表されました。
その後、バリアフリーという言葉が世界に広まりました。アメリカでは人種差別や性的差別といった障壁に対してもバリアフリーという言葉が使われています。ハードの面だけではなく、人々の気持ちの面における障壁を取り除くという意味でも、バリアフリーという言葉は使われているのです。

ノーマライゼーションとバリアフリーは違うの?

バリアフリーは「障がい者」が感じている、様々なバリアをなくすという意味合いがあります。車いす利用者専用のトイレを設けたり、視覚障碍者のために点字案内板を設置したりする。これらは、障がい者の視点から、利用がしやすいようにと作られたものです。
バリアフリーは、障害がある方が困らないようにという、思いやりの心から生まれたと言えるでしょう。けれど「障がい者」という言葉には、どこか隔たり(バリア)のようなものがあるように感じられます。
ノーマライゼーションは、障害があってもなくても同じように暮らせる社会を作るという考え方です。では、バリアフリーはノーマライゼーションの原理に反しているのでしょうか?
実は日本でも近年、バリアフリーの理念が障害者施策という考え方ではなく、全ての人が安全に暮らせる社会を作るという考えに変わりつつあります。
建築面だけではなく、文化や情報、意識の面でも障壁をなくすというように、バリアフリーの意味が拡大されてきています。ノーマライゼーションを実現するための手法の一つが、バリアフリーと言えるのです。

バリア──障がい者にとっての障壁が消えるとき

内閣府が発表した「障害者白書」には、障がい者が社会生活を送るうえで、
1.物理的障壁
2.制度的障壁
3.文化・情報面での障壁
4.意識上の障壁(心の壁)
という、4つの障壁があるとして、これらを除去していかなければならないとの記載があります。そして、バリアフリーという言葉は、障がい者だけではなく全ての人の社会参加を困難にしている、物理的、社会的、制度的、心理的な全ての障壁の除去という意味で用いられると書かれています。
ノーマライゼーションの理念にあるように、障がい者を特別視せず、社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えていけば、障がい者のためのシンボルマークは不要になるのかもしれません。
そのためには、街の整備だけではなく、人の心も変えていかなければならないでしょう。4つの障壁のうちの、意識上の障壁がなくなれば、全ての障壁がなくなる日は近いかもしれませんね。

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