鞆の浦の保命酒

広島県福山市鞆の浦の名産、保命酒をご存知ですか?保命酒とは、生薬を含むことから「瀬戸内の養命酒」とも呼ばれるリキュールで、鞆の浦にある酒造会社のほか、広島空港や福山駅の酒屋、または土産店などで購入することができます。鞆の浦の鞆町を散策すれば、年季の入った看板の保命酒屋を発見できるでしょう。鞆の浦へ観光に訪れた旅行者からは、鞆の浦ならではのお土産として喜ばれています。

鞆の浦に伝わる保命酒の歴史

保命酒の起源は350年前

保命酒の起源は約350年前、万治2年にまでさかのぼります。保命酒の生みの親となったのが、大阪の医師・中村吉兵衞。すでに醸造業が栄えていた鞆の浦のお酒と、吉兵衞の漢方の知識が合わさって、保命酒は生まれました。やがて保命酒は、江戸幕府より備後の特産品として庇護され、全国に知れわたるようになります。

ペリーも飲んだ保命酒は高級品だった!?

幕府の庇護を受けたことで、保命酒は高級品とされるようになりました。幕末、アメリカからペリー提督がやって来た際にも保命酒がふるまわれたと記録されています。明治時代にはパリの国際万博に出展されるなど、保命酒は国内のみならず海外にも名を轟かすようになりました。そんな中、保命酒の類似品を製造する業者が現れたことにより、保命酒は中村家の専売特許として認められ、以降、保命酒のレシピは門外不出となったのです。

保命酒の効果は?

保命酒の正式名称は「十六味地黄保命酒」

焼酎、もち米、麹の3つに十三種類の生薬を漬け込むことから、保命酒は十六味地黄保命酒(十六味保命酒)とも呼ばれています。ちなみに、保命酒づくりは途中まで本味醂と同じ工程をたどります。保命酒の飲み口は甘く、生薬の香味が独特の味わいをもたらします。アルコールによって保命酒の成分が早く吸収され、冷えや夏バテ、疲労回復などに効果があるといわれています。

保命酒の甘みを活かして

保命酒が健康にいいとはいえ、アルコールが苦手な人は手が出ないかもしれませんね。そんな人もトライしやすいよう、保命酒を使ったさまざまなお菓子が販売されています。保命酒のど飴、保命酒ジュレ、保命酒せんべい、保命酒パウンドケーキなど…。今や保命酒は薬味酒の枠を超えたスイーツへと進化しているのです。

保命酒をつくっているのは鞆の浦だけ

鞆の浦でしのぎを削る保命酒屋

現在、保命酒は広島県福山市鞆町にある4つの保命酒屋でしかつくられていません。「入江豊三郎本店」「岡本亀太郎本店」「八田保命酒舗」「鞆酒造」の4社は、小さな港町・鞆の浦の伝統を守るべく、また、鞆の浦だけでなく広島を代表する名産品として、保命酒づくりに励んでいるのです。鞆の浦を訪れた際には、保命酒の味をぜひ一度試してみてくださいね。