教育こそノーマライゼーション。制度を変えた東松山市
「ノーマライゼーションの基本は教育にある」との考えを持った東松山市は、「障がい児は特別支援学校に就学させたほうがよい」という分離教育の発想を変えることにしました。通学に負担がかかる児童こそ、地元の学校に通うほうがいいとの判断です。 分離教育は、小学校入学の時点で障がい児と健常児を分ける就学指導委員会(東松山市では就学支援委員会)が障がい児の就学先を考え、障がい児を本来の教育制度から分離して教育を受けさせることです。
東松山市は、ノーマライゼーションのまちづくりを実行しようと決めていました。そのとき社会の問題を解決する基本が教育であると考え、障がいの有無で通う学校を分けることを止めました。これは全国で初めてのことでした。
保護者が相談しやすく安心して学べる環境へ
就学支援委員会を廃止する代わりに、保護者の希望を尊重できる体制として、東松山市では就学相談調整会議を設立し、保護者の選択をサポートすることにしました。会議の委員は、臨床心理士や校長経験者などで構成され、親が参考にできるような選択肢を用意してアドバイスしています。どのような環境での学習を望むか、もしくは不安に思っていることは何かを保護者から聞き取ったりしています。例えば、教室のイスでは着席したままでいることが難しい障がいがある場合、選択肢の一つとして、その児童にとって実用性のあるイスを導入して通学できるようにする、といった情報提供や検討ができるようになりました。この施策によって、「就学支援委員会から強く意見を言われるのとは全く異なる」、「相談しやすい」と感じる保護者も出てきているようです。
また市は、小学校・中学校に市内で合計数十人の介助員を派遣しました。おかげで保護者は安心して子どもを地元の学校に通わせることができるようになり、その後、義務教育の年齢に該当する障がいのある子どもの75%前後が地元の通常の学校に通うようになっています。給食を誤嚥してしまう懸念のある児童が入学した際には、作業療法士を派遣し、ほかの生徒たちと食事できるようにしました。これらの柔軟な仕組みが構築されたことによって教師も安心して障がいのある児童を受け入れられるようになっています。 さらに教育の分野では、障がいがある子どもも友だちや先生と生活ができるように、成長の早い時期で環境に慣れていくことがよりよいと考えられています。そこで同市でも、インクルーシブ教育(インクルージョン教育)とは何かを検討して、早い段階で対応していくシステムを構築。保育園でも障がい児を受け入れられるようにしました。保育園に看護師を配置して、医療サポートが必要な障がいのある子どもを保育園に受け入れています。子どもたちは、ともに保育園に通う地元の子どもたちとの触れ合いを重ね、自ずと近隣の小学校に通いたいという意識につながっていくという効果が出ています。東松山市ではこのようにして、インクルーシブ教育の実現につなげているのです。
参考文献・出典
月刊ノーマライゼーション(2008年2月号)
梅村浄「就学指導の現場はどう変わっているか」現代書館
ノーマライゼーションの事例
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デンマークの高齢者向け在宅ケア
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