鞆の浦の鯛
広島の福山市鞆町は、「鞆の浦といえば鯛」といわれる所以となった、鯛で有名な町です。福山・鞆の浦に浮かぶ仙酔島では、初夏の瀬戸内海を代表するイベント「鯛網(観光鯛網)」が行われています。鯛網は、鞆の浦に約380年伝わる伝統漁法。2015年に福山市指定無形民族文化財となり、5月に観光鯛網として船から観覧できます。
鞆の浦には、鯛飯、鯛茶漬けなど鯛料理の店もあり、鯛網のない時期でも鞆の浦の名物を味わえます。
『崖の上のポニョ』の舞台ともいわれる港町・福山の鞆町で鯛を楽しんでみませんか。
江戸時代初頭に考案された鯛網の歴史
現在に続く福山の無形民俗文化財
約380年前、江戸時代に始まったといわれる鞆の鯛網。冬の間に外洋で育った鯛は、初夏、産卵のために穏やかな瀬戸内海の鞆の浦に集まります。その鯛を、地元の網元が一網打尽にしようとしたのが鯛網の始まり。それまでの地引網や立て網による鯛漁の代わりに考案した漁法といわれています。さらに瀬戸内海を訪れた人に漁を見てもらおうと、1923年から観光鯛網が始まりました。戦争のため一度は行われなくなりましたが、1949年に復活。鞆の浦観光鯛網は、2015年に福山市の無形民族文化財に指定されました。
鞆の浦だけに残る伝統漁法「鯛しばり網漁法」
鯛網漁は、「鯛しばり網漁法」と呼ばれるもの。「指揮船(沖合船)」のほか、漁の情報を指揮船に伝えたり獲れた魚を運んだりする「生船」、網を上げ下ろしする「網船」2隻、網船それぞれの錨の代わりとなる「錨船」2隻の計6隻の船が、1つの漁で協力し合います。 親船となる2隻の網船は、指揮船からの合図で長さ1500メートル、幅100mに及ぶ大きな網を広げていきます。船は左右に大きく分かれて少しずつ円を描くようにして走行。距離を縮めて互いの網をしばり上げると、鯛は網の中へ追い込まれます。そして漁師たちの「エット、エットー、ヨーイヤサンジャー」という掛け声で鯛のかかった網を引き上げます。息のあった連携が見事な漁法です。
伝統漁法を体感する観光鯛網
福山は鞆の浦の風物詩
鯛網は、広島県福山市が無形民俗文化財の伝統漁法として指定し、毎年続けられています。観光鯛網はポニョの舞台とも言われる福山・鞆の浦の景勝とともに圧巻の漁を目の当たりにできる瀬戸内海の風物詩。初夏、福山へ観光に訪れたなら、鞆の浦で人気の観光鯛網を見物するのがおすすめです。
船の上で観覧する伝統漁法
「鯛しばり網漁法」という伝統漁法は現在、広島の福山・鞆の浦でしか行われていないそうです。この漁法を船から見ることができるのが観光鯛網船の魅力。漁の期間に鞆の浦を訪れたら、船上から観覧するのがおすすめです。 鯛網の船は、仙酔島から出港しますので、まず鞆から仙酔島に渡る船「平成いろは丸」に乗りましょう。仙酔島に渡ったら、鯛網漁船の出る観覧船乗り場へ移動します。
船は、仙酔島の鯛網観覧船乗り場から出港し、弁天島の間を抜けて鞆の浦の瀬戸内海の漁場に向かいます。伝統漁法で魚を囲い、網にかかった魚を引き上げますが、希望者は観覧するだけでなく、親船に乗って長靴と救命胴着をつけた上、網を引くのを手伝う「網引体験」ができます。
獲れた鯛はその場で買い付けられます。船では、魚を入れる容器や氷も購入でき、宅配便も船上で申し込めます。抽選で保命酒のプレゼントも!
船はその後、鞆港を周遊。瀬戸内海ならではの景色を堪能できる絶好の機会です。鯛網の終了後、県営桟橋か仙酔島まで戻って下船となります。
鯛網観覧料は、大人(高校生以上)2800円で、小・中学生1400円。鯛網観覧券は、福山市観光コンベンション協会のほか、福山駅観光案内所、鞆の浦観光情報センターで購入可能。福山駅前鞆鉄バス案内所では、バス券つき観覧券が、大人3300円、小・中学生1650円で購入できますので、福山駅から鞆の浦へ向かう場合は、バス券つきチケットがおすすめ!
2017年の鞆の浦観光鯛網
2017年の「鯛網」は、5月3日(水)〜5月28日(日)。鯛網の船は、例年通り福山市鞆町仙酔島田の浦の仮設桟橋より出港します。詳細は、福山市観光コンベンション協会にお問い合わせください。 鞆の浦歴史民俗資料館では、観光鯛網の季節に合わせて鯛網コーナーを設置。鯛網の歴史を知るだけでなく、色鮮やかな大漁旗を間近に見ることができます。鯛網コーナーで、古い保命酒の看板も見られるそうです。
鞆の浦の鯛を味わう
観光鯛網だけじゃない鞆の浦の名物
鞆の浦でお食事に迷ったら、やはり鯛。鞆の浦名物の鯛は、初夏の鯛網だけでなく鯛料理として地元の名店で楽しめます。定番の鯛めし、鯛茶漬けから、鯛塩ラーメンのほか鯛そうめんなどのお食事を楽しめるお店があり、鯛網を観覧した後のランチにもおすすめです。また、お食事だけでなく、鯛わた塩辛、鯛かまぼこ、ちくわなどおすすめのおみやげがいろいろあります。広島でもここでしか買えない、瀬戸内海の味をおみやげにしてください。
名物の味、伝統の味
鞆の浦には鯛料理を楽しめるお店があります。『千とせ』では、ふっくらした白身と潮の香りが詰まった鯛めしと、鯛のおかしらが入った鯛そうめんを味わえます。ランチもオープンしています。『鯛亭』は、50年続く有名店。ランチも営業しています。鯛亭では、鯛めしのほか、鯛の身に熱々のお出汁をかけていただく鯛茶漬けを楽しめます。ゆったりとした店内と落ち着いた佇まいの和食料亭『衣笠』では、鯛を使ったちょっと豪華な定食を味わうことができます。
おみやげにしたい名物いろいろ
魚の練り物を扱う『ウオヒサ』は明治30年創業の老舗。その直営店舗の『旬鮮市場 鯛工房』では、鯛のスモークハムや鯛ちくわのほか、鯛ラーメンも扱っています。
鯛の練り物で有名なのは『阿藻珍味 鯛匠の郷』。珍味を買うだけでなく、鯛ちくわを作ったり、鯛せんべいを焼いたりといった体験ができる、人気の観光スポットです。毎月末の日曜日、鮮魚や自慢の珍味・練り物などを販売する特設朝市「鯛匠楽市」もおすすめ。
『鞆 肥後屋』は砂糖を使わず、味噌本来の甘みと本みりんによって、こだわりの味に仕上げた鯛みそのお店。瀬戸内海の真鯛を使った自慢のお味噌で、生姜入りの「鯛味噌白」、山椒入りの「鯛味噌赤」などが選べます。
鯛料理を堪能できる宿
福山駅から鞆の浦まではバスで約30分、尾道からも近いため、日帰りでも楽しめますが、ホテルや旅館で一泊して、のんびり福禅寺対潮楼からの眺望を楽しんだり、映画『ウルヴァリン』のロケ地やポニョの舞台を探しながら散策したり、さらにカフェや鞆のお酒・保命酒のお店を巡ったり。鯛網を観覧した後でも旅館やホテルが決まっていたら、お食事や地元の観光も存分に味わえるでしょう。
坂本龍馬ら海援隊が借入れていた蒸気船「いろは丸」が、紀州藩の軍艦・明光丸と衝突したため瀬戸内海で沈没した、いろは丸事件。その際の談判が行われた町家(旧魚屋萬蔵宅)を旅館にしたのが『御舟宿いろは』です。歴史の舞台としてだけでなく、宮崎駿監督のデザイン画をもとに改装が行われたことでも知られています。レストランではランチなど、食事だけの利用もOK。
宿で温泉を楽しむなら『ホテル鴎風亭』と『景勝館漣亭』がおすすめ。弁天島と仙酔島を正面に望むことができる温泉宿です。
陰陽五行説に基づくお食事が提供される『人生感が変わる宿 ここから』は、仙酔島にある旅館。瀬戸内海に浮かぶ仙酔島の自然とゆったりとした時間を満喫できます。