渡船場のすぐ西側に視線を移すと、美しい石垣が目に映ります。その高台の上に悠然と建つのが『福禅寺対潮楼』です。平安時代の天歴年間(947〜957年)に、空也上人によって、「観音堂」(天台宗)として建立されたと伝えられています。
のち、1638(寛永15)年に、後陽成天皇の第三皇子によって、真言宗大覚寺の末寺に指定。その際に、寺号が「観音堂」から「福禅寺」に改められ、そのまま、今日に至っています。
鞆の浦第一の景勝地として昔から愛されてきたこのお寺さん。その歴史を、受付のスタッフさんが親切に教えてくれますよ。ぜひ、お話を伺ってみましょう。
「日東第一形勝」―その賛辞に相応しい絶景
この「対潮楼」は、1694(元禄7)年に、憲意上人によって本堂が改築された際に、新しく建てられた客殿で、朝鮮通信使三役の迎賓館として使われてきました。つまりは、文人・墨客らの交流の場、サロンだったんですね。1711(正徳元)年、従事官・李邦彦は、そこからの眺望を「日東第一形勝」と賞賛。のち1748(延享5)年には、正使・洪啓禧が、客殿を「対潮楼」と命名し、書を残しています。
ちなみに、この眺望写真、谷村新司さんが歌う「いい日旅立ち(山口百恵さんのカバー)」のCDジャケットにも使われたんですよ。
◇朝鮮通信使も絶賛した、この絶景
海上安全と安産信仰を集めたご本尊・千手観音
村上天皇の后となった、この地(備後国赤坂村)出身の新庄太郎実秀の娘・明子は、日頃から千手観音信仰に篤かったといいます。そこで、后となった明子は、故郷に千手観音を祀るお堂を建てたいと思い立ち、空也上人によって「福禅寺」の前身となる「観音堂」が開基されました。ご本尊の千手観音は長い間、本堂の厨子の中で秘仏として安置されていたものです。
◇良好な状態で保存されていたご本尊さま、華美
福禅寺対潮楼の基本情報
2012年8月5日 公開
住所 広島県福山市鞆町鞆2
営業時間 8:00〜17:00
料金 大人200円 中高生150円 小学生100円
お問い合わせTEL:084-982-2705
その他・朝鮮通信使遺跡鞆福禅寺境内(国指定史跡)
・本尊/木造千手観音立像(福山市重要文化財)
・木造地蔵菩薩半跏像(福山市重要文化財)
・木造役行者像、二鬼[前鬼・後鬼]像(福山市重要文化財)
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